そのDXは100を30にするのか、それとも30を3にするのか

ITを使ってなにか業務の処理速度が早くなるとする。

例えば配属されたばかりのスタッフがPCの入力を行うときに、パソコンを初めて触る人でも初日からそのアプリを利用すると、100分必要な入力が30分で終わる。

ただし、3年前に入社したスタッフも、同じように30分の時間が必要になる。
まぁもしかしたらなれているから少し時間が短くなるかもしれないけれども、せいぜい1分か3分かで、もしかしたら誤差の程度かもしれない。

ある程度の経験を持つスタッフが30分必要な作業を3分で終わらせるためにはどうすればいいのか。

そのアプリは商品コードを入力するときに、選択ウインドウが開いて、5回選択すると商品が特定されるので、商品知識がなくても、短い時間で入力ができるのだ。もちろんキーボード入力の必要もない。矢印キーとエンターキー、テンキーくらいしか使う必要はない。

人間も努力する部分がないのだ。

 

では30を3にするアプローチがないのかといえば、そんなことはない。
品番、あるいは商品コードを直打ちすればいいのだ。

30秒かかる商品コードの入力がキーボードを利用することで2秒以下になるとする。だがそのためには
・ブラインドタッチができること
・製品の品番やコードを暗記していること
が人間側の能力として必要なのだ。

つまりは、属人的な作業になってしまう。

1000人も2000人もいる大企業だと、100分を30秒に縮めるのが投資戦略としては正しいのだと思う。

これが、会社組織が10人に満たない場合は、30秒かかる仕事を2秒に縮めるのが戦略としては正しいのだと思う。

システムのどの部分にお金を投入するのかだ。

ただ100を30にする仕組みは、人をほとんど成長させない。

そういう意味では、人を成長させるDXと成長させないDXがあるのではないだろうか?

音声入力を使うことやホロレンズを使うことで、人の成長がストップしてしまうというか、経験が蓄積されない業務ばかりになって、結果十数年後人材がまったく育っていない、というのはまずいのではないか?とも考えたりする。

そのDXは成長の機会を奪ってしまうのではないか。

そういうことを考えたりもする。

だからキーボードのブラインドタッチくらいは全員出来るようになろうね、とか「これだけは身につけてくれ」というような負荷は必要なんで、しっかりやろうね、暑いかもしれないけれども、倉庫の整理整頓とか掃除とか、商品の手入れとか清掃とかちゃんとやりましょうね、という話なのだ。

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